夜間立ち入り禁止

 東北が郷里の友人から聞いた話だ。

 彼の実家には蔵があって、しかしそこには何の荷物も置いていない。完全なデッドスペースである。 

 この蔵には太陽が赤くなってから後、つまり夕暮れ以降の夜間には、誰も立ち入ってはならぬと言い伝えられているのだという。

 入ればどうなるのか。

 大変好奇心をそそられる話だが、禁を犯した者は未だないそうだから、それはわからない。


 毎日朝早くにそこを掃除するのが家の子供の仕事で、それが大層嫌だったと彼は語った。

 大抵は何もない、綺麗なままの蔵だけれど、まれに動物のものと思しき体毛や血が散らばっている時がある。

 閉じた空間にひどい生臭さが充満していて、思い出すだけで吐きそうになるとの事だった。

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