雨戸トカゲ

 雨戸を閉めると、必ず雨戸と窓ガラスとの間に一匹のトカゲが入り込む。

 そうして奇妙に白い腹を晒し、ちょろちょろと狭隘きょうあいな空間を蠢くのだ。

 カーテンを閉めれば当然その姿は見えなくなる。それで気にもならなくなる。

 けれど連日のように繰り返して出現されるうちに、その小さな姿が癇に障って仕方なくなった。


 ある時実家から弟を呼んで、窓の外に立たせた。

 私が雨戸と窓を閉め終えて声をかけたら、外から雨戸を開け放って、そこにいるはずのトカゲを捕えろと命令をした。

 打ち殺すまでしなくとも遠くへ捨てればそれで片付くと、そう思っていた。

 けれど外側からトカゲを見た弟はぎゃっと叫んで逃げ出して、それからどう問い詰めたって、


「あれはトカゲなんかじゃなかった」


 と首を振るばかりだった。

 

 だからトカゲは今日も、白い腹を晒して窓ガラスを這っている。

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