好奇心旺盛

 出張先で民宿に泊まった。

 手違いで予約したホテルに入れず、仕方なく紹介してもらった先がそこだった。着いてみれば、悪くない宿だった。食事も美味いし、風呂は源泉から引いた温泉だという。湖を見下ろす二階部屋の眺望もなかなかのものだ。

 だが宿泊に際して、ひとつ妙な警告をされた。


「夜中は部屋の窓障子を、必ず閉めたままにしてください」


 空調もしっかりと機能しているし、暑い事はない。どうせ夜は寝るばかりなのだから、眺めに拘る必要もない。素直に首肯してもよかったのだが、やはり気になったので理由を尋ねた。すると、


「夜になると、蛇が覗く事があるのです」


 それ以上の回答を拒否するような応えだった。

 複雑な事情でもあるのだろうと、重ねては問わずに了承をした。



 深夜。

 むっと満ちた青臭い匂いで目を覚ました。まぶたを開けると、部屋は不思議と薄明るい。

 光源の正体はすぐに知れた。黄味がかって丸い、バスケットボール大のふたつの球体が窓の外に浮かんでいる。障子紙越しにぼんぼりめいて、淡く光が滲んできている。

 はて、あんなところに街灯はなかったはずだが、などと寝ぼけた頭で考えていると、二つ並んだ光は揃って数度点滅をした。

 そしてすうっと、隣の部屋の方へと動いていった。

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