好奇心旺盛
出張先で民宿に泊まった。
手違いで予約したホテルに入れず、仕方なく紹介してもらった先がそこだった。着いてみれば、悪くない宿だった。食事も美味いし、風呂は源泉から引いた温泉だという。湖を見下ろす二階部屋の眺望もなかなかのものだ。
だが宿泊に際して、ひとつ妙な警告をされた。
「夜中は部屋の窓障子を、必ず閉めたままにしてください」
空調もしっかりと機能しているし、暑い事はない。どうせ夜は寝るばかりなのだから、眺めに拘る必要もない。素直に首肯してもよかったのだが、やはり気になったので理由を尋ねた。すると、
「夜になると、蛇が覗く事があるのです」
それ以上の回答を拒否するような応えだった。
複雑な事情でもあるのだろうと、重ねては問わずに了承をした。
深夜。
むっと満ちた青臭い匂いで目を覚ました。まぶたを開けると、部屋は不思議と薄明るい。
光源の正体はすぐに知れた。黄味がかって丸い、バスケットボール大のふたつの球体が窓の外に浮かんでいる。障子紙越しにぼんぼりめいて、淡く光が滲んできている。
はて、あんなところに街灯はなかったはずだが、などと寝ぼけた頭で考えていると、二つ並んだ光は揃って数度点滅をした。
そしてすうっと、隣の部屋の方へと動いていった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます