群がる
蒸し暑い夏の夜の事だ。
気温に挫けず日課のランニングに出た私は、薄暗い街灯の下で妙なものを見た。それは多量の蛾である。
電灯の光に群がっていたのならば気にも留めない。
だが無数の蛾たちは、全てが地面に降り立って緩慢に羽の開閉を繰り返していた。そしてこんもりと密度と厚みとを備えて集う群れの形は、どうしたって大の字に横たわる人間そのものにしか見えなかった。
よもやあの下に、昏倒した誰かがいるのではないだろうか。
一瞬の恐れを、使命感が上回った。
ばんばんと地面を踏み鳴らすように駆け寄って蛾を追い散らす。
けれど虫たちの逃げ散った後に、黒々としたアスファルトの他は何もなかった。
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