猫の皮

 友人の家の蔵から奇妙なものが出た。奇妙な光沢を備えた毛皮である。

 カビ臭い蔵に押し込められていたというのにふわふわと手触りがよく、不思議にも暗がりで撫でると青白く、火花のようなものがぱちぱちと飛ぶ。

 気をそそられた友人はその毛を数本切り取って、何の皮かを調べてもらいに行った。


 期待に反して結果は味気ないものだった。ただの猫の皮だったのだという。

 友人は落胆しきりで、「つまらん、実につまらん」と鬱憤を吐き、酒を呷って眠ってしまった。


 だが、と皮を撫でながら私は思う。

 3メートルを越える猫の毛皮など、果たしてそうそうあるものだろうか。

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