階段婆
近所の大きなスーパーに買い物に行った時の事だ。
地階の生鮮売り場から一階へ上がろうとしたら、その階段の中ほどにお婆さんが座り込んでいた。
気分が悪くなってとか体調を崩してとか、そういった理由で座っているのではないようだった。人の良さそうなにっかり笑顔でただただ階下を眺めている。
縁側から庭を駆け回る孫でも見るような風情で、場合によっては微笑ましいとも言えたろう。
だけどお婆さんが陣取っているのは階段の真ん中も真ん中、ど真ん中のポジションだった。流石に通行の邪魔だ。
迷惑を感じつつ、私は端によって通り抜けようとした。
と、その時。
一階側から小学生の一団が階段を駆け下りてきた。
危ない、と声を出す
彼らはお婆さんの背中に突き当たり、そしてそのまますり抜けてけた。
お婆さんは優しい目で子供たちを見送ると、唖然とする私を他所にゆったりした仕草で立ち上がり、伸ばした腰をとんとんと叩いた。
それからにっかり私へ笑いかけ、何とも軽い足取りで、すたすた階段を昇っていってしまった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます