階段婆

 近所の大きなスーパーに買い物に行った時の事だ。

 地階の生鮮売り場から一階へ上がろうとしたら、その階段の中ほどにお婆さんが座り込んでいた。

 気分が悪くなってとか体調を崩してとか、そういった理由で座っているのではないようだった。人の良さそうなにっかり笑顔でただただ階下を眺めている。

 縁側から庭を駆け回る孫でも見るような風情で、場合によっては微笑ましいとも言えたろう。

 だけどお婆さんが陣取っているのは階段の真ん中も真ん中、ど真ん中のポジションだった。流石に通行の邪魔だ。

 迷惑を感じつつ、私は端によって通り抜けようとした。


 と、その時。

 一階側から小学生の一団が階段を駆け下りてきた。

 危ない、と声を出すいとまもなかった。

 彼らはお婆さんの背中に突き当たり、そしてそのまますり抜けてけた。

 

 お婆さんは優しい目で子供たちを見送ると、唖然とする私を他所にゆったりした仕草で立ち上がり、伸ばした腰をとんとんと叩いた。

 それからにっかり私へ笑いかけ、何とも軽い足取りで、すたすた階段を昇っていってしまった。

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