とたたとたん

 とたたとたん、とたたとたん。

 床を鳴らして、枕元で小人が踊る。それはもう毎晩の事だ。

 かみしもに身を包んだその一寸法師は、足袋履きの足で力一杯フローリングを踏み鳴らす。


 これが初めて現れた時は、仰天もしたし怖がりもした。

 そのうち害がないと知れて見慣れてくると、私の感情は「可愛らしい」へと変化し、最終的に「うるさい」で落ち着いた。

 零時過ぎから夜明けまで、延々と枕元で踊られ続けてみればいい。私の気持ちがよくわかるはずだ。

 些細な音は恐ろしく耳にさわって、到底眠れたものではない。


 ある夜、とうとう腹に据えかねた。

 現れて踊り始めようとした小人を、私は無造作に手のひらで打った。ぐにゃりと、やわらかなものを潰した感触が確かにした。

 しかし持ち上げて見てみれば、床にも手にも何の痕跡もない。体どころか衣服ごと、小人はすっかり消え失せていた。


 そうして、私の部屋に静寂が戻った。

 静かだ。とても静かだ。これが夜というものだ。

 もっと早くこうしておけばよかった。

 思いながら目を閉じて、そのままぐっすり朝まで眠った。

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