木を隠す

 死んだ祖母の家の床下から、大量の白骨が出た。

 古いものから真新しいものまでが混在して堆積しており、骨の地層の下のものなどは、砕けて粉に近いような状態になっている。

 すわ大事件かと思われたが、原型をとどめたものを見るに、それは犬猫の骨だと知れた。 

 もう荼毘だびに付された祖母に文句を言う事もできず、仕方なく親族総出で大掃除をし、集めた骨を業者を呼んで処分してもらった。


 しかし祖母がこれほどの生き物好きだとはついぞ知らなかった。

 は数ヶ月に一度とはいえ、この家には顔出しに来ていたのに、そうした小動物の姿を一度たりとも見た記憶がない。

 それに、だ。

 可愛がっていた動物が死んだとして、果たしてその亡骸なきがらを床下に放置しておくものだろうか。

 得心がいかずに首を捻っていると、従姉妹の一人が呟いた。


「そういえばお祖母ちゃんには、行方不明になったままの妹さんがいたよね」


 はっとして振り向くと、


「木を隠すなら森の中。でももう真相は藪の中だね」


 それきり、彼女は口をつぐんで開かなかった。

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