三時に鳴る

 午前三時にチャイムが鳴る。

 マンションエントランスのインターフォンではない。俺の部屋のドアチャイムが、だ。

 ドアを開けても誰もいない。開けずともノックされるだのなんだのという事はない。

 だが午前三時、必ずドアのチャイムが鳴る。

 無視して眠っていればいいのだが、どうしてかそれが鳴ると、必ず目が覚めてしまう。

 その後もなかなか寝付けないので、俺はだんだんと寝不足になった。


 オートロックを抜けてきているのだから、おそらく同じマンションの住人の仕業だろう。

 腹を括って玄関に張り込んで、ドアスコープを覗き続けてみた。

 人影などまるで見えないのに、三時丁度にチャイムが鳴った。俺はもうこの部屋を越そうと思った。


 そこへ、折りよく出張の話が舞い込んだ。

 数日の泊まりを要する仕事で、これでしばらく部屋を離れられると俺は陽気になった。

 初日、ホテルでぐっすり眠っていると、ドアチャイムが鳴った。

 時計を見れば、午前三時だった。

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