揺れ動く

 叔父が後添のちぞえをもらった。

 前の妻に先立たれてからしばらく男やもめを通していたのだが、何やら心境の変化があったものらしい。


 それから、思わぬ事が起きるようになった。

 後妻が仏壇を拝むと、必ずそれががたがたと揺れ動くのだという。

 仏壇には先妻の位牌が収まっているから、これは悋気りんきであろうという事になった。


 叔父は「死んだ者より生きている者が優先だ」と仏壇を捨てようとしたのだが、流石にそれは後生が悪いとなだめられた。

 結局行き場をなくしたその仏壇は、無信心者ばかりのうちに引き取られた。叔父からは幾許いくばくかを貰ったらしい。


 仏壇は、今も時折がたがた揺れる。

 怒るというよりも居心地悪く身をよじるようで、少し可笑おかしい。

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