引きこもる
ドアの向こうから声がする。
哀願する母の声がする。
「お願いだからここを開けて。お願いだから顔を見せて」
繰り返し請う言葉は、そのうちすすり泣きに変わった。
だけど私は部屋から出ない。絶対に。
だって。
片手を持ち上げて見下ろした。
意識した一瞬だけ、ゲル状の粘塊は私の手の形を成して、そしてすぐ崩れて
だから私は部屋から出ない。絶対に。絶対に。絶対に。
だって。
床にどろりと広がる私の上で、妹が笑っている。
私の体に捕食され侵食された彼女は、もう私と混ざり合って境目すら見つからない。
私は死ぬまで部屋から出ない。
それが、一等いいに違いないのだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます