待っている

 お父さんの仕事の都合で、引っ越しをする事になった。

 新しい家に着いたらお父さんお母さんは荷ほどきに忙しくなって、僕はすっかり手持ち無沙汰になってしまった。

 なので、ひとり新しい街の探検に乗り出した。


 これから通う学校、行き帰りに通る事になる商店街なんかを見て回って、ふと大通りを外れたら、何とも言えない公園があった。

 池があって水鳥がいて、遊具なんかもちゃんとしている。だけど小さいわけじゃないのに人が少しもいなくて、なんだか陰鬱いんうつな雰囲気の場所だった。

 どうも気味が悪い。

 戻ろうと振り返ったその鼻先に、僕と同じくらいの男の子がいた。古臭い野球帽を目深まぶかにかぶって、表情はよく見えない。

 いつの間にこんなに近くまで。驚いて声もない僕を尻目に、少年は口元をにいっと歪め、


「お前んちで待ってる」


 そう言って風のように駆け出した。

 一文字いちもんじに走っていくその方角は、確かに僕の家がある方だった。

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