羽帽子

 学校からの帰り道。友人と別れて一人になって、ふと視線を道の先にやったら、ブロック塀の向こうを羽根帽子が行くのが見えた。

 外国の肖像画の人が被っているような、ちょっと見ない不思議な帽子だった。特徴的な羽飾りが目を強く引く。

 羽根帽子は丁度塀の高さぎりぎりのところにはみ出していて、被っている人の姿は全然見えない。まるで帽子が独り歩きしているみたいな、不思議な光景だった。


 あれを着用しているのはどんな人なのだろう。好奇心が湧いた。

 敷地が違うので、ブロック塀の高さは均一ではない。次の塀は今帽子のある塀よりも一段低くなっている。だからそこで顔が見えるはずだ。


 でも足を止めて眺めているうちに、はっとなった。

 帽子の動きは絶対におかしい。上下動は少しもなくて、ただすーっと滑るように進んでいる。人間にそんな動きができるものだろうか。

 気づいたら急に気味悪くなった。


 羽根帽子は塀の境目に近づいている。

 でもあれを被っているモノは、多分見てはいけない類のものだ。そういう気が強くした。

 手遅れにならないうちにきびすを返し、僕はその場から走って逃げた。

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