伸縮自在
物音がしたので覗いてみると、マンションの敷地の片隅で、黒猫と鴉がにらみ合っているところだった。
鴉は樹上に陣取って、容易にここまでは来れまいと猫を小馬鹿にする風情である。
猫は若いのだろう。
そんな挑発など捨て置けばいいのに、うろうろと鴉が陣取る木の周りを巡って隙を窺うようだった。
どうも
引っ込もうかと思った瞬間、ぱたりぱたりと揺らしていた猫の尾がすっと伸びた。伸びて、ぴしゃりと鴉を打った。
「えっ!?」
思わず声が出た。
見物の俺が驚いたのだから、当の鴉の
そこから視線を戻すと、黒猫はじっとこちらを見ている。明らかに「しまった」という顔つきをしていた。
「何も見てないぞ」
そう言って首を振ってやると、納得したのかしないのか、微妙な声でひとつ鳴き、猫はくるりと背を向けて駆け去った。
あの鴉の二の舞にならぬ為に、明日は猫缶でも用意しておこうかと思う。
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