蚊柱

 暑さも和らぎ、大分涼しくなってきた。

 よく晴れた午後だけれど、そこまで汗ばみもしない。時折吹く強い風が心地よかったので、買い物帰りの足を少し伸ばして、公園を散策する事にした。


 広域避難場所にもなっている広い公園のそこかしこには、夏休みの最後を満喫するような子供たちの姿がある。

 自分にもあんな頃があったなと懐かしみながら歩いていると、夏の名残りのような蚊柱が目に止まった。

 それは驚くほどに大きくて太くて、黒々と不穏な気配を漂わせている。

 あれの傍を通るのは嫌だなと道を転じようとしたその時、蚊柱が不意に形を変えた。

 ぐうっと密度を増して固まると手のひらそっくりの形になって、近くに居た子供の背中へとつかみかかる。


 だが割って入るように、風がまた強く吹いた。

 蚊柱は子供に届く前に吹き散らされて、それきり形を成す事はなかった。

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