べたべた

 僕は綺麗好きな方だ。

 実家にいた頃からそうだし、一人暮らしを始めてからもそれは変わらない。

 友人には「潔癖症の一歩手前かその範疇はんちゅうだ」なんて言われたりもするけれど、服の乱れは心の乱れというように、部屋の乱れもまた気持ちの乱れに繋がるのだと思っている。

 あるべきものが整理整頓されてあるべき場所にある。

 そういう事に僕は快さを感じる。

 その日も部屋の掃除を終えて、習慣通り眼鏡のレンズを丁寧に拭いて枕元に置き、目覚ましをセットして眠りについた。 


 翌日、顔を洗って眼鏡をかけると、視界がぼやけている。妙に汚い。

 怪訝に思って眼鏡を外すと、そのレンズの表にも裏にもべたべたと、おびただしい数の指紋が捺印されていた。

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