横たわる

 駅前で待ち合わせをしていた。

 友人からは少し遅れるとメールがあったので、ただぼーっと車道を見ていた。そのうちに私が来る前から停まっていたワゴンに人が乗り込み、発車した。

 どう思うでもなく見送って、ふと視線を戻してぎょっとした。


 路面に男性が横たわっていた。

 ワゴンがあった時からずっと、そこに寝ていたのだろうか。だとしたら、何の為に?

 男性はぴくりとも動かない。

 ひょっとして、死んでいるのではあるまいか。

 思案の末、一歩踏み出したら、彼はむくりと、不意に上体を起こした。

 それから私を見てにたりと笑い、平然と歩き出して人波にまぎれてしまった。

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