奇

染み

　大学入学を機に、学生寮で一人暮らしをする事になった。

　引越し屋が運び込んでくれた荷物を荷解きして、さてと一息ついて、そして気づいた。部屋の壁に、ぽつりと小さな染みがある。

　白い壁に茶色く周囲に滲むように、はっきりと目立つ染みだった。せっかくの真新しい気分に、水を刺された心地になる。

　掃除用具を取り出して擦ったが、落ちない。しかも翌朝見たら、少し大きくなっているような気さえした。

　それから学校が始まって一週間。

　慣れない学生生活と一人暮らしの両立に大忙しで立ち振舞って、週末、ふと思い出して壁を見た。

　染みは明らかに大きくなっていた。何故だかぞわりと背筋が寒くなった。

　学生部にある事ない事訴えて、部屋を変えてもらった。

　出来たての友達に頼み込んで荷物を移動させて、ほっと一息ついて、そして気づいた。

　その壁にも、ぽつりと。

　前の部屋とそっくり同じ大きさの、茶色い染みがあった。