奇

音が鳴る

　留守番を任されて、一人きりで家に居た。

　居間でのほほんとゲームをしていると、突然背後の床がばんと鳴った。大人が手のひらで強く叩いたような音だった。

　びっくりして飛び上がって振り返ったけれど、そこには誰もいない。

　なのに、ばん。床がまた強く鳴る。

　怖くなって、二階の自分の部屋に逃げようとした。けれど立ちはだかるように、ばん、ばん、ばんと階段が鳴る。

　家のどこに行っても音は先回りしてつきまとって、とうとう半べそをかきながら、裸足で外に飛び出した。

　途端物凄い揺れが来て、目の前で家はぺしゃんこに潰れた。

　地震でへたり込んだ肩を、ぽん、と誰かが優しく叩いた。

　音は、それきりしなくなった。