屏風絵

 うちの蔵には二曲一隻にきょくいっせきの屏風がある。

 そこには高名な画家の筆で、大層美しい女が描かれていたのだそうだ。


 数代前の爺様が、屏風に描かれたその女に恋をした。怪しげなやり口でかき口説いて、とうとう女は返事をして屏風から出てきたのだという。


「だからうちの家系には血以外に絵の具が混じってんだ、絵の具」


 とは、酔っ払った親父のげんである。


 話の真偽は知らないし、確かめようもない。

 だが蔵の屏風絵には、丁度人の形に空白がある。それだけは間違いのない事だ。

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