煙突

 風の強い夜の事である。

 車の進行方向に、月まで届きそうに高い煙突が見えた。

 はて、あんなところにあんな煙突があったろうか。

 記憶にない光景にちらちら脇目を使っていると、近づくにつれ正体が知れた。

 それは人柱だった。

 沢山の人間が丁度組体操のように、手を組み足を組み組み上がった、一本の長大な柱だった。


 その時、一際高い唸りを上げて、強く風が吹いた。

 柱はぐらりとよろめいた。

 右に揺れ左に傾き、それでもしばらくはバランスを保っていたのだが、やがて耐え切れなくなったのだろう。ついに根元から崩れた。

 部品であった人体が、ばらばらと地面に降り注いでいくのが見えた。

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