戯れる

 庭の犬がやたらと吠える。

 ただし威嚇ではなく、親しいものに構ってもらいたがる時のそれである。

 誰か友人でも来たのだろうか。

 二階の窓から顔を覗かせると、犬はバスケットボール大の、得体の知れない何かと戯れていた。

 最初は子犬か子猫かとも思ったが、違う。それは手足どころか頭も目鼻も何もない茶色い毛の塊だった。


 犬が何かされるのではと、咄嗟とっさに危惧がぎった。

 こら、と上から怒鳴りつけると、毛玉は悪戯を見つけられた子供のようにびくりと怯み、意外な速さでころころ転げて、庭から出ていった。

 犬は尻尾を振りながら、また来いとでも言うように、ひとつ大きくそれへ吠えた。

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