からくり時計
不案内な駅で待ち合わせをした。待ち合わせ場所はからくり時計の下との事だった。
若干の不安があったのだが、「大きくて目立つから絶対判るよ」と言われた通り、時計はすぐに見つかった。余裕を見て家を出た分、時間を持て余してしまうくらいだ。
手持ち無沙汰になってしまって、私は頭上の時計を仰ぐ。
その時計の盤面は四角く、それが更に幾つかの正方形に分割されていた。パネル分けされた小さな四角は時間の経過で回転をして、その内側から花が現れたり、小人が顔を覗かせたりする意匠になっている。
そして小人の中には大胆にも、ぐっと外側、こちら側へ大きく身を乗り出している者がいた。まるでスリルを楽しむような表情で、長針が迫ってくるの待ち構えている。
きっと針が来る瞬間、そのぎりぎりで時計盤の中に頭を引っ込めて、事なきを得る仕掛けなのだろう。
時計自体が大きいから、一分ごとに針が進む幅また大きい。
刻一刻と迫るそれは、ギロチンの刃のようなそれは、もう目と鼻の先になっている。けれども小人はまだ逃げない。
いつ頭を引っ込めるのだろうと見守るうちに、またかちりと針が進んだ。
肉を引きちぎる音がして、小人の首が目の前に落ちた。
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