水たまり

 雨上がりの町に出た。

 強い雨が止んだばかりの、その独特の空気の中を散歩するのが好きだった。

 ふらふらそぞろ歩き、やがて信号に阻まれた。歩みを止めて青を待つ。すると不意に、か細い力が足首に触れた。

 え、と思って見下ろせば、水たまりから突き出た子供の手が、必死に私の足を掴んでいる。

 反射的に振り払うと、手は呆気なくほどけた。二、三度くうを寂しく撫でて、それからちゃぷんと水たまりに沈んでいった。

 後には、小さな波紋が残るばかりだった。

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