お揃い

 最寄の駅を寝過ごしかけて、慌てて電車から飛び降りた。

 危ないところだったと胸をなで下ろす。そして改札へ向かう雑踏に混じろうとして、唖然あぜんとなった。

 道行く人全てが皆、判で押したように同じ顔をしている。誰も彼もが一様に、デスマスクの如き無機質な無表情を貼り付けて歩いている。

 目をこすってもまたたいても、事態は少しも変わらない。


 はっとなって駅の手洗いに飛び込んだ。

 備え付けの鏡で自分の顔を見る。

 するとそこに映ったのは、やはり判で押したような、みなとお揃いの顔だった。

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