炬燵

 正月。炬燵に座椅子をくっつけて、だらりと本を読んでいた。

 ページを捲りながら、一緒に足も組み替える。すると一人座りのつもりだのに、組み替えたその足に何かが触れた。

 どうせまたうちの犬が潜り込んでいるのだろう。邪険に押しやると、その足をぐいと掴まれた。


 掴まれて、引かれた。

 椅子の背にもたれた状態から、天井を仰ぎ見るくらいにまで引き倒されて、そのまま鳩尾の辺りまで、炬燵の中に引き込まれた。

 悲鳴を上げながら炬燵から這い出し、手近にあった煎餅缶の蓋を構えて上掛け布団をめくり上げる。


 しかし、そこにはもう何もいなかった。

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