そうだ! 心霊スポットに行こう!1


「あ、おかえりになりますか?

 お送りしましょうか?」


 社長室から出てきた鳴海にそう言った堺は、


「ちょっと話聞いてくるわ」

と沐生に小声で言い、一緒にエレベーターに乗って下に下りることにした。


 だが、鳴海と話しながら、堺は思う。


 この男……、思った以上に危険な男だ。


 ヤバイ。

 意気投合してしまう。


 困ったことに話が合うのだ。


 主に晶生の話がだが。


「ほんとうに彼女は天使のように可愛らしかった」


「そうねえ。

 でも、私は今の晶生の方が好きだわ。


 あの天使の顔に、暗い影を宿した瞳がミスマッチで、ゾクゾク来るのっ」


 わかります、わかります、と頷く鳴海と語り合う。


 だが、車まで行ったとき、鳴海が言った。


「おっと、すみませんね。

 ずいぶんと話し込んでしまって。


 刑事として、容疑者の貴方と馴れ合ってしまってはいけないのですが」


「いや……私、第一発見者で、容疑者じゃないから」


 というか、その第一発見者の立場も美乃から押しつけられたものだから、と思ったとき、鳴海が言った。


「まあ、私は須藤晶生を突き飛ばした許しがたい女がもしかしたら、事件に関係あるのかもと思っていますけどね」


「そうねえ」

と相槌を打ったあとで、おかしいな、と堺は思う。


 その女が事件の関係者だとして、何故、晶生を突き飛ばしたのだろう。


 そんなことをすれば、自分がやましい人間だと彼女に教えてしまうようなものなのに。


 それでもやってしまうほど、まずい秘密を今日、晶生に知られたとか?


 それにしては、事件の情報が手に入りましたともなんとも、晶生、言ってこないけど、と堺はスマホを確認するが、晶生から連絡が入った形跡はなかった。


 今、こういう感じになってるから、堺さん心配しないで、とか入れてきそうなものだけど。


 いつもと違う……。


 なにか変だな、と思いながら、堺は夜の街に去りゆく鳴海の車を見送っていた。




 その頃、晶生はまだタナカ イチロウと話していた。


「ともかく、その女をどうにかして誘い出さないと……」

と話していた晶生の視線が、デスクに置いてあるまっさらな色紙に向いた。


 この間、恵利にまた、うっかり探偵のサインを書いてくれと頼まれて渡されたのだ。


 それを見ていた晶生だったが、

「そうだ!」

といきなり手を打った。


「『怪奇現象を追え!II』よっ」


「……は?」

とタナカ イチロウが訊き返してくる。






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