そうだ! 心霊スポットに行こう!2
次の日の夜、晶生はタナカ イチロウとともに、解体工事中の遠藤のビルに居た。
「なんで階段残してるの?」
と晶生がすでに上のフロアはなくなっている廃墟を見上げて言うと、イチロウが、
「此処は上から壊してってるんだが。
なんでだかわからないが、なんとなく残ってるんだ、この階段」
みんな見えてないのにな、遠藤、と呟いていた。
「階段なくなっても遠藤、きっと此処に居るわよ。
あの辺に浮かんでる」
と今現在、遠藤が居る辺りを指差し、晶生は笑ったが。
「いや、さすがになくなったら居なくなるぞ」
そう遠藤は言ってくる。
だが、そんな風に思ってしまうのは、この場所から消えてしまう遠藤の姿が思い浮かばないからかもしれない。
そう晶生が思ったとき、青いシートに覆われた入り口から、ちょっと高い男の声がした。
「やあやあ、すみません。
お待たせしました」
やって来たのは白い杖を手にした笹井だった。
「お呼び立てしてすみません、笹井さん。
実は、少しご相談がありまして」
そう晶生が言うと、笹井は、ははは、と笑い、
「私に晶生さんたちに協力できることがあるのなら、なんなりと。
遠藤さんとも、一度、ゆっくりお話ししてみたかったですしね。
いやあ、ほんとうに霊が見える人は、過去の人とも話せたりしてすごいですよね。
ちょっとしたタイムスリップですよね。
ところで、遠藤さんは、今、どちらですか?」
と言うが、まるきり反対方向を向いている。
「……こいつ、本当に霊能者なのか」
とその様子を見ながら呟くイチロウに晶生は、
「ちょっと前までの貴方のことも全然見えてなかったみたいだしね」
と笑って言った。
「笹井さん、遠藤さんはこっちです」
と晶生が階段を手で示すと、
「やあ、こちらですか。
初めまして、笹井です」
と言いながら笹井は階段に近づいていく。
「遠藤、気をつけて。
笹井さん、見えないけど、霊、消せるから」
避けて、と言ったが、遠藤は避けずに近く笹井を見上げている。
「これしきの力で私が消えるか。
この程度で消える奴はもともと成仏したかった奴だよ」
と言う遠藤を見ながら晶生は思っていた。
ってことは、遠藤はまだ、なにかこの世に未練があるんだな、と。
だが、そのとき、遠藤に挨拶しようと階段を上がっていた笹井がいきなり階段で土下座した。
「すみません、すみません。
私、本当は目は見えてて、霊は見えません」
よく見ると、遠藤の側にあの土下座のペンがまだ転がっていた。
「……あれ、もう何処かに持ってってあげてよ」
と晶生はイチロウに言う。
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