全部、引っ繰り返す気か……
若い娘たちでごった返す店の白い椅子に、どっかと腰を下ろし、堀田は言ってきた。
「甘ったるい匂いのする店だな。
なにがお薦めだ」
食べるんだ? と苦笑いする晶生の横で、
「ミルクパフェでーす」
と恵利が言ってきた。
あんた、私には、いい加減違うの食べろって言ったーっと思いながら、晶生は、その適当な一言を聞いていたが、堀田は、
「じゃあ、それをもらおう」
と言う。
そんな堀田の横で、林田はまだ、メニューにかじりついて悩んでいる。
「待ってくださいっ。
まだ僕決めてませんっ」
「じゃあ、お前はあとで頼め」
と言って、堀田は恵利を行かせた。
凛と真田は堀田たちの後ろのテーブルに居る。
凛が堀田と同じテーブルは緊張するから嫌だと言ったのだ。
まあ、どのみち、四人しか座れないので、分かれて座らなければ無理だったのだが。
晶生は、堀田が来るまでに、パフェを食べ終わっていたので、グレープフルーツジュースを頼んでいた。
絞り立てらしく、これも美味しかった。
堀田たちの後ろの凛がこちらをチラチラと振り返っているのを見ながら、晶生は言う。
「あーあ、凛、堀田さんに怯えちゃってますよ。
どんな強引な取り調べをしたんですか」
してねえよっ、と言ったあとで、腕組みした堀田は渋い顔で言ってくる。
「それでなくとも、最近じゃ、取り調べの可視化だなんだとうるさくてしょうがないしな」
「可視化、いいんじゃないですか?
見てなかったら、指の二、三本、へし折られそうですよ」
と黒いストローに口をつけながら晶生が言うと、
「まだ折ってねえじゃねえか。
お前の指も、須藤沐生の指も」
と堀田は言ってきた。
外では、長谷川で呼んでくださいよ、と思いながら、間に合えば来ると言った沐生の姿を求め、晶生は振り返ってみたが、やはり、間に合わないようだった。
まあ、まだ、鎌倉を出てなかったみたいだしな、と思っていると、
「で?
なんで、田所に会いたい?」
と堀田が訊いてきた。
晶生はちょっと困ったような顔をして、壁の高い位置にあるサイン入りのカップ麺を見ながら言った。
「田所さんって、本当に――」
そこで、晶生は凛に聞こえないよう、声を落として言った。
「
「……殴るぞ、須藤晶生」
てめーが偉そうに俺たちを呼びつけて、ご高説たれたんじゃねえか、と言ってくる。
「いや、本人が自白してるから、犯人なんでしょうけど。
どうも気になるんですよ。
石塚南央が、凛を見てビクついて。
それを我々に、というか、堀田さんたちに隠そうとしたことが――」
そう晶生は言った。
林田がまだ悩んでいたメニューから顔を上げる。
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