もしや、喧嘩を売っていますか……?



 晶生は、凛たちと訪ねたスイーツの店の外で電話をしていた。


 注文を済ませたあと、やはり気になったので、堀田に連絡を取ることにしたのだ。


「堀田さん、今、何処ですか?

 今からそっち行ってもいいですか?」


『警察、茶を飲みに来るとこじゃねえぞ』


 今、何処だ? と言われる。


 この間、男が刺されて転がっていた場所を見ながら、晶生は言った。


「この間、人が刺されたとこですよ」


『そんなとこ、いっぱいあるっ』

と怒鳴り返してくる堀田に、


 まあ、堀田さん的にはそうだろうな、と思いながら、


「笹井さんのカップラーメンがあるところです」

と言った。


 いや、笹井さんが作ったカップラーメンではないのだが。


『ああ、あの、うっかり探偵のサインがある店な』

と堀田は言う。


 ……よくご存知ですね、と思いながら、行き交う車を眺めていると、わかった、と言って、堀田は電話を切った。


 こちらに来るようだった。


 堀田もなにか引っかかっていることがあるのだろう。


 晶生は、一応、沐生に電話してみることにした。


 いちいち報告しなくてもいい気もするのだが、ちょっと理由を作って話してみたい乙女心だ。


 出ないかなー、ロケ中で切ってるかな?

と不安に思いながら、かけたのだが、沐生は電話に出てくれた。


「あのさ、もし、会えるのなら、田所さんに会って、ちょっと話したいなって思ってるんだけど」


 なんでだ? と問うてくる沐生に、

「ちょっと訊きたいことがあるのよ。

 まあ、今、田所さんと会えるかどうかはわからないんだけど。


 一応、堀田さんに相談してみようかと思って」

と言うと、沐生は、


『あのオッサンにか』

と言う。


 電話の向こうで、渋い顔をしているようだ。


『俺も間に合えば行く』

と言ってくれた沐生の声に、


『私も行くわ』

と被ってきた気がするんだが、幻聴だろうか、怪現象だろうか……と思いながら、晶生が携帯を切ったとき、後ろから声がした。


「わー、ガラケーですねー。

 久しぶりに見ましたー。


 なんかいいことあるんですか? ガラケーにしてると。

 盗聴されないとかですか?」


 こら、店員、と振り向くと、恵利が、

「もうお席にお持ちしましたよ、ミルクパフェ。

 晶生さん、ミルクパフェ率、高いですよね。


 はまってるんですか?

 たまには、違うのもどうですか?


 今、誰と話してたんですか?


 芸能人の人ですか?

 霊能者仲間とか?」

と笑顔でまくし立ててくる。


 ……霊能者仲間ってなんだ。


 っていうか、いつ如何なるときも、どんな相手にも、突っ込んでは訊かない、うっかり探偵と違って、この店員、グイグイ来るなー。


 晶生は苦笑いしながら、恵利とともに、店へと戻った。





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