あっ!

 



 爽やかな朝だ。


 ……昨日、人が刺されたけど。


 そんなことを思いながら、真田はいつもの登校路を歩いていた。


 そのとき、信号を渡ってこちらに来る女に目をとめた。


 昨日、現場から逃げた女に似ているような……?


 そう思った真田は足を止め、出勤途中らしい女がこちら側に来るのを待って、話しかけた。


「あの」


 こちらを向いた女は、少し赤くなり、なんですか? と言ってきた。


 少し造りがのっぺりとしていて、これと言って特徴のない顔だった。


 だが、少し丸顔気味で年頃の娘らしい愛らしさがある。


「すみません。

 昨日、居ませんでしたか?」


 そこの……と長たらしい店名が思い出せず、振り返って指差そうとしたとき、女が逃げ出そうとした。


「あっ、ちょっと待ってっ」

と女の腕をつかもうとすると、突き飛ばされた。


 女は自分で突いておいて、驚いた顔をする。


 どうやら、自分は車道に向かって後ろ向きに倒れているらしい、と真田は思った。


 目の端にこちらに向かい、走ってくる車が見えた。









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