たぶん、そこに居ます II


 



 そのあと、林田たちと連絡を取り、篠塚邸を一緒に訪れたのだが、篠塚の母の凛を見る目は冷たかった。


 そんな母親に向かい、晶生は言う。

「この人、犯人じゃないですよ」


 えっ? という顔を彼女はした。


 篠塚の母が凛を責めそうな雰囲気に、申し訳なくなったのか、口を開こうとした田所に、晶生は小声で、

「田所さん、まだです」

と囁いた。


 田所は今、猛烈な後悔に襲われていることだろう。


 篠塚の両親は別に悪い人ではない。


 娘の父親として、篠塚に腹を立て、カッとなってやってしまったのだろうが。


 子どものことを考えているのは篠塚の親も同じだ。


 そんなこと、殺す前にわからなかったのかと人は言うかもしれないが。


 普通の精神状態ではないので、当たり前といえば当たり前のことなのだが、殺人を犯す前後には、うまく頭が回っていないことが多い。


 晶生の頭に、あの夕暮れのダムが浮かんだ。


 男が落ちた水面を見ていた自分。


 なにか……忘れているような……、と思ったとき、その幻視を破るように、堺が話しかけてきた。


「晶生、大丈夫?」


 晶生があの夕暮れの世界に取り込まれそうになっているのに気づいたようだった。


 ああ……大丈夫ですよ、と言ったあとで、晶生は、篠塚の母に向き直る。


「すみません。

 息子さんの使ってらした勉強部屋は、どちらですか?」


 なにこの人、という訝しげな目で見られてしまう。


 チラと林田を見ると、えっ? 僕っ? という顔をしたあとで、林田は、堀田に怯えながらも、

「あのー、実はこの人は、警察が協力してもらっている……探偵さんで」

と言いかけ、


「探偵?」

と余計、胡散臭そうに言われていた。


「いやその、霊能者の人で」


 ……余計怪しくなってきたから、林田さん、と思う。





  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

応援した人

応援すると応援コメントも書けます

ビューワー設定

文字サイズ

背景色

フォント

一部のAndroid端末では
フォント設定が反映されません。

応援の気持ちを届けよう

カクヨムに登録すると作者に思いを届けられます。ぜひ応援してください。

アカウントをお持ちの方はログイン

フォロー機能を活用しよう

カクヨムに登録して、気になる小説の更新を逃さずチェック!

アカウントをお持ちの方はログイン

フォロー機能を活用しよう

カクヨムに登録して、お気に入り作者の活動を追いかけよう!