たぶん、そこに居ます I

 


「まあ、それで私も篠塚さんは何処にいらっしゃるのかな、と考えてみたんです」


 凛、と晶生は友人を見る。


「前、何処がいいのかなんて訊かないでって言ってたけど。

 何処かいいとこはあったはずよね?

 なんとなくでも」


 何処? と訊くと、

「まあ、真面目なとこかな?」

と言う。


「どうしようもない人なんだけど」

と真奈美を見ながら、凛は言った。


「勉強とか将来のこととか、そういうことには真面目なの。

 医者になりたいのも、親が勧めるからとか、収入がいいからとかそういうのじゃなくて。


 本当にただ、医者になって、病気を治すか、研究をしたいと思ってる人だった。


 私の家庭教師を引き受けたのも、大学に残るのなら、人を指導することも必要だと思って、シュミレーション的にやってみようと思ったかららしいし」


 それでついでに生徒を引っ掛けるのはどうかと思うのだが……。


 まあ、別に引っ掛けたつもりもなかったんだろうな、と思う。


 言い寄ってきたから、ただ、引き受けた、みたいな。


 或る意味、沐生的な朴念仁だ。


 ……いや、私は言い寄ってはいないが。


 たぶん、田所真奈美の方も強引に言ってきたから、別に断るほどのこともないので、婚約した、みたいなところだろう。


 家の格も釣り合ってたようだし。


 篠塚の親にしても、婚約者でも居た方がいろいろと間違いを起こさなくていいと思ったのかもしれない。


 家も良く、見た目も悪くない医大生なら、いろいろ怪しげな女が言い寄ってきたりもするだろうから。


 まあ、結局のところ、凛と問題を起こしてしまったが。


「田所さん、まだ犯人だって言わないでください」

と言うと、ええっ? という顔を田所はする。


「殊勝な婚約者の親のフリをして、篠塚家に行ってください。

 我々と一緒に。


 ああ、凛も」

と凛を見た。


「篠塚さんはたぶん、そこに居ます」





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