実は、此処に居ます V

 


「貴方は私を殺しませんよ。

 そんな理由もないですから」


 晶生はそう田所に言った。


「いえ、娘のためにはどうかな、と思ってはいるんです。

 犯人として捕まるのは」


 その言葉に、うーん、と晶生は小首を傾げる。


「いや~、娘さんのためを思うのなら、罪を重ねるより、さっさと捕まった方がいいですよ。


 殺したのが、浮気性の娘の婚約者ひとりなら、多少は情状酌量の余地もあるかもしれませんが、二人だとないんじゃないですか?


 しかも、私は、ただの貴女の娘さんの恋敵の友達ですから」


 そんなことを言う晶生の真下から、遠藤が相変わらず、余計なことを言ってくる。


「でも、お前が殺されても犯人絞れないだろ。

 沐生かもしれないし、堺かもしれないし。


 あの真田とかいうのはやりそうにないけどな」


 田所さんに今、聞こえてなくてよかった……と思っていた。


 聞こえたら、殺られる、というわけでもないが。


 そう思ったとき、堺が口を挟んできた。


「大丈夫よ。

 なにがあっても、晶生はわたしが守るわ」


 堺さん、とその力強い言葉に晶生は堺を振り向く。


「その代わり、私が死にそうになったときは、道連れよ」

「……なんでですか」


「あんたが沐生となんの障害もなく、引っつくのを見るのが嫌だからよ」


 心配しなくても死んでたら、なにも見られませんよとは言えなかった。


 堺も自分も霊が見えているから。

 死んだらそこで終わりだとは言えなかった。


 それにしても、いまいち、頼りになるのかならないのかわからない人だな、と思いながら、晶生は話を戻す。


「まあ、あの婚約者の方の場合、浮気性ってのとはちょっと違うかもしれませんが」

と言うと、田所は、そうなんです、と言う。


「浮気性とかいうのなら、まだよかったんですけどね」

と。

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