実は、此処に居ます V
「貴方は私を殺しませんよ。
そんな理由もないですから」
晶生はそう田所に言った。
「いえ、娘のためにはどうかな、と思ってはいるんです。
犯人として捕まるのは」
その言葉に、うーん、と晶生は小首を傾げる。
「いや~、娘さんのためを思うのなら、罪を重ねるより、さっさと捕まった方がいいですよ。
殺したのが、浮気性の娘の婚約者ひとりなら、多少は情状酌量の余地もあるかもしれませんが、二人だとないんじゃないですか?
しかも、私は、ただの貴女の娘さんの恋敵の友達ですから」
そんなことを言う晶生の真下から、遠藤が相変わらず、余計なことを言ってくる。
「でも、お前が殺されても犯人絞れないだろ。
沐生かもしれないし、堺かもしれないし。
あの真田とかいうのはやりそうにないけどな」
田所さんに今、聞こえてなくてよかった……と思っていた。
聞こえたら、殺られる、というわけでもないが。
そう思ったとき、堺が口を挟んできた。
「大丈夫よ。
なにがあっても、晶生はわたしが守るわ」
堺さん、とその力強い言葉に晶生は堺を振り向く。
「その代わり、私が死にそうになったときは、道連れよ」
「……なんでですか」
「あんたが沐生となんの障害もなく、引っつくのを見るのが嫌だからよ」
心配しなくても死んでたら、なにも見られませんよとは言えなかった。
堺も自分も霊が見えているから。
死んだらそこで終わりだとは言えなかった。
それにしても、いまいち、頼りになるのかならないのかわからない人だな、と思いながら、晶生は話を戻す。
「まあ、あの婚約者の方の場合、浮気性ってのとはちょっと違うかもしれませんが」
と言うと、田所は、そうなんです、と言う。
「浮気性とかいうのなら、まだよかったんですけどね」
と。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます