実は、此処に居ます II



「聞かなくて後悔しないか」

と沐生は言ってくる。


 後悔?

 後悔ならしてますよ、いつも、と思っていた。


 あのときも、あのときも、あのときも……


 今もしそうだ、と思っていると、沐生はふいに手を離した。


 わかっていたのかどうなのか。


 沐生がラグに腰を下ろして、本を開いた瞬間、母親が戸を開けた。


「さっさと風呂入って寝なさいよ、あんたたち」


「はーい……」


 ひとりで壁に張り付いている変な人になってしまったではないか、と思いながら、素知らぬ顔で本を読んでいる沐生を見た。








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