そこに居ます III
「こんばんは。
あの、この人は、マネージャーの堺さんです」
私のじゃないんですが……と思いながら、待ち合わせた夜の街で、田所に堺を紹介する。
は、はあ、と戸惑う田所は恐らく、堺が男か女かわからないでいる。
ま、まあ、いいか。
今回の事件と関係ないしな、と思って、特に説明はしなかった。
「申し訳ありません。
お忙しいのに。
まさか、マネージャーまでついてらっしゃる霊能者の方だなんて」
あとでお礼はお支払いしますから、と言ってくるので、
「いえいえ、そんなんじゃないんですよ」
と慌てて言うと、
「ほんとそんなんじゃないんですよ~」
と堺が口を挟んでくる。
「私が付いてきたのは、仕事でじゃなくて。
単に付き合ってるからです。
私と晶生が」
と笑顔で晶生を手で示す。
「堺さん~っ」
「あ、男の方だったんですか」
と結論が出て、ほっとしたらしい田所が少し笑っていた。
「いやいや。
関係ないです、本当に」
行きましょう、田所さん、そこでお茶でも、と後ろにある、あのスイーツの店を指差すと、田所は店の看板を見上げて呟いた。
「本当なんですね」
「え?」
「本当に霊能者の方なんですね。
私、なにも言っていないのに。
この店は、私の娘がよく来る店なんです。
私が探して欲しい、この間亡くなった娘の婚約者も、娘に連れられ、来ていたかもしれません」
妙に感心されたので、申し訳なくなり、なにかもう黙っていられないな~と思って、晶生は白状した。
「すみません。
私が此処を指定したのは、私が霊能力で突き止めたのではないんです。
私、……秋村凛の友だちなんです」
「そうなんですか」
と言う田所は、自分が凛と同じ制服を着ていることには、やはり、気づいていなかったようだった。
凛の学校が何処なのか知らなかったのだろうか。
自分で言うのもなんだか、結構な名門校なので、制服もすぐにわかりそうなものなのだが。
娘の婚約者を殺したかもしれない女のことなのに、彼は凛には興味ないようだった。
「とりあえず、入りませんか?」
と言うと、田所は戸惑いながらも、……はい、と頷く。
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