霊の居処 VIII

「貴方は霊が見えるんですか?」


 紳士が少女に訊いていた。


「ええ。

 まあ、少々」

と彼女が言うと、紳士は一瞬考え、


「あの、実は探して欲しい霊が居るんですが」

と言ってきた。


 すると、何故か少女は、

「……またですか」

と呟いていた。


 また? と思っていると、

「お礼はします。

 会って話がしたい霊が居るんです。


 巷で有名な霊能者にでも頼もうかと思ったんですが。

 誰が本物なのかわからないし」

と言う紳士に向かい、少女は問うた。


「何故、私が本物だと思うんですか?」


「そのような顔をしてらっしゃるので」


 大真面目な顔で紳士は言う。

 少女はいきなりこちらを向いて言ってきた。


「どのような顔?」


「なんで僕に訊くんですか」


 紳士はこちらを振り向き、

「貴方は、この方の運転手かなにか」

と訊いてくる。


「はあ、まあ、ある意味……」


 タクシーのですけどね。

 っていうか、何故、この子の運転手。


 いいように使われているからか? と思っていると、少女は紳士に訊いていた。


「何故、此処からダムを覗いてらしたんですか?」


 すると、紳士は自分に言ったのとはまるで違うことを答えていた。


「此処なら、その霊が現れるかもしれないと思ったからです」


 少女は紳士を見つめて問う。


「お名前は」


「田所と申します」



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