立ち寄らなくてもいいのに、立ち寄ってみたダムのほとり IV

「いや……」

と沐生を上から下まで見て


「何処の国に居るの、その王子様は、みたいな夢語りをされたら、殴る自信があるわ」

と言う。


 だと思った、という顔を凛はしていた。


「だって、あんた、話に入ってきたことないもんね。

 クラスで誰かが長谷川沐生の話をしてるとき」


 警戒してるからというより、話が合わないからのような気がしてた、と凛は言う。


 少し考えるような素振りをしたあとで、唐突に手を打ち、晶生は言った。


「よし、わかりました、堀田さん。

 私が、その婚約者とやらに会ってみましょう」


 腕を組んで聞いていた堀田は、なんでだ? という顔をする。


「なんだ、その、わしらに協力しているかのような口調は、嬢ちゃん」


「私が会って確かめてみてあげますよ。

 その婚約者さんにシンパシーを感じるかどうか」


 待て、晶生。

 それだと自分が犯罪者だと認めていることになるが、と思っていると、沐生も同じ目つきで横目に見ていた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る