立ち寄らなくてもいいのに、立ち寄ってみたダムのほとり I
あら。
やっぱり、来なきゃよかったわ。
車を警察車両が居る方にとめ、歩いてきた堺は思った。
車をとめるとき、沐生の車があるのも確認していた。
ちょうど居た警官に、
「此処、とめさせてねー」
と微笑むと、男? 女? という顔をしながら、赤くなり、
「あ、はい……」
と言ってきた。
あの顔を見たくて、こんな風に生きてるのかもな、と人の悪いことを思い、笑っていたが。
今、目の前に見えてきたものを見た途端、その笑いも引いてしまっていた。
少し寒そうにした晶生に沐生が自分の上着をかけてやっている。
面白くもない光景だ。
時折、自分でもわからなくなる。
本当に晶生が好きなのか。
ただ、単に彼女を、というか、あの二人をからかって遊んでいたいのか。
だが、今、本気でムッとしてしまった。
やっぱり、晶生が好きなのかな。
不毛だな……と自分で思う。
晶生の心が沐生から動くことはない気がするからだ。
なんで、あんな随分と年下の小娘を。
まあ、子供の頃から、目も腹も据わった女だったが。
そして、あの頃こんな風に成長するかなと思っていた以上に、今の彼女は美しい。
それは、人間離れしたあの空気のせいだろう。
それは、ただ美しいだけの女優やタレントでは出せないものだった。
……晶生は本当は役者に向いていると思うけど。
これ以上、人前に晒したくないな、と思ってしまう。
沐生にも誰にも見せないで、何処か、自分しか知らない場所に閉じ込めておきたくなる。
だが、まあ、それも犯罪だ。
殺人じゃなくても、と晶生と沐生を見て笑ったとき、二人と、あの堀田とかいう刑事がこちらに気づいた。
「ちょっと沐生、なにやってんのー。
此処電波の通りが悪いのに。
急なスケジュールの変更が入ったらどうしてくれんの?」
といつも通りの口調で言いながら、彼らの許に行った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます