夕闇の街



 晶生は廃墟に近いホテルを出て、ひとり街を歩いた。


 帰宅途中の人々が脇目も振らずに歩いている。


 その隙間を縫うように歩いていたが、正面からやってくるスマホを手にしたトレンチコートのサラリーマンとぶつかりかける。


 だが、その男は、すいっと晶生を通り抜けていった。


 夕暮れの光の中、はっきりと肉体を持っているかのようなその人影を晶生は振り返る。


 私は人波が怖い。


 本当は私も生きている人間と霊の区別が曖昧だからだ。


 特にこんな夕暮れどきの。


 初めて人を殺したときと同じ光の中では――。


 人波を遮るように、今の人影を、そして、廃墟ホテルを振り返るように足を止めていた晶生は呟く。


「……祟るのなら、私に祟ればいいのに」


『霊もいろいろと勘違いしているんですよ』


 堺に向かって放った自らの言葉を思い出しながら、晶生はまた歩き出した。


 人とも霊魂ともわからぬ人波の中を。





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