一番欲しかったもの2
「契約って、知ってるか?」
聞き慣れない言葉を聞いた。
俺は背筋を伸ばして声の方を見る。
森の中に小さな人間の子どもが数人、円陣を組んで座っている。
「契約? それって人間の
別の子どもの声。
「当たり。
「人間って、今の、こういう姿をした生き物のことだよね」
「そうそう」
「それって楽しいの? よくわからない」
人間の子どもの姿をしている彼らは、
「人間と契約すれば、何かあっても卵に戻れるし、また新しい人間と契約すれば復活できるようになる。命が永遠に続くってこと。凄く面白いと思うけど、グレイはどう?」
最初に声を上げた男の子が嬉しそうに言うと、その隣で女の子がうーんと首を傾げている。
「ゴルドンはそれがいいと思ってるかも知れないけど、私は嫌だな。人間なんて面倒くさい。姿格好はとても綺麗だし、
グレイと呼ばれた女の子が、立ち上がって俺に声をかけてくる。
彼らから離れた木陰で休んでいた俺を、こっちにおいでと誘っている。
俺は目を逸らした。
『何だあいつ。人間の姿をしてるときは、僕のことが誰だかわからないのか?』
俺が入り込んだ誰かの声が頭に響く。
無視をしていると、よりによってその子は、俺のところまで駆け寄って顔を覗き込んできた。
「ねぇ、どう思う? やっぱり人間の
金色の目と黒い髪が印象的な、とても可愛らしい子だ。
俺は慌てて顔を腕で隠した。
「わ……、わからない。難しい」
何と答えればよかったのか。
中途半端過ぎて怒られるかな。そう思っていると、彼女は更にまじまじとこちらを覗き込んでくる。
「ねぇ。見かけない顔だよね。凄く白い肌。それに、髪の毛の色も変わってる。白? 銀色? 人間って、もっと色が付いているような。人間に
「……え?」
思わず顔を上げた。
「やだ。目も変な色。もう少し暗い色の方が良いんじゃない。真っ赤っかよ。ね、名前は? あなたの名前教えて」
「名前……?」
途端に、俺は目を丸くする。
『名前って、何だ。僕の名前?』
「友達になりたいの。お名前、教えてくれる?」
おかしい。女の子の顔が歪んで見える。
「名前。僕の、名前は」
・・・・・‥‥‥………‥‥‥・・・・・
黒い玉があちこちで弾け、その度にうめき声が上がった。
俺はケタケタと笑い、また次の魔法を錬成する。
その魔法が完成するかどうかというとき、背後に巨大な何かの気配を察知した。振り向く。目を見張る。
水竜。
水でできたこの竜には見覚えがある。砂漠でも平気で水の魔法を使う、シバの。
「来澄ィィィィイィィィィイイィイイイイイ!!!!」
シバはやたらとデカい声で俺の名を呼んだ。
大丈夫、聞こえてる。
俺はここに居る。
水竜がガバッとデカい口を開き、俺に向かって突っ込んでくる。
俺は鎌を振るうが、水を切ることはできない。水竜はそのまま俺の真っ正面に突っ込んだ。途轍もない量の水が、一気に身体にのしかかった。
・・・・・‥‥‥………‥‥‥・・・・・
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