【17】新たなる干渉者
67.三角関係
三角関係1
夏休みに入ったというのに、補習補習で午前中が丸つぶれだ。全く面白くない。
今年はどうやら空梅雨らしくて、知らぬ間に梅雨が終わっていた。ただジリジリとした日差しが照るばかりの毎日、いつも通り学校に行くのは辛い。学校までの緩やかな坂道をとぼとぼと歩く。
蝉の声がメインだったBGMに小学生どもの無邪気な声が混じるのがまたイライラするわけで。早めに宿題すりゃいいのに、どうしてこう学校もないのに朝早くから友達同士で走り回れるのかなどと、自分が小学生の頃は宿題は8月の末に纏めてするものだと思い込んでいたことを棚に上げて考えたりする。
運動部のヤツらは夏休みという概念がそもそもあるのかないのか、朝から学校の外周を走っていた。朝の涼しいウチに、いい汗を掻く。素晴らしい。俺にはできない。
沈んだ気持ちで教室に入り、渋々補習を受けた。
予告通り芝山がいて、ボクも来てるよと親指立ててアピールしてくるが、アイツがここにいるのは動機不純だから見てるといらつく。二つの世界を行き来する仲間は仲間なんだが、どうしてだろう、高いところから俺のことを見下しているような気がしてならないのだ。
コレがこの先まだまだ続くのかと思うと気が滅入るが、仕方がない。入院期間が思っていたよりもずっと長かった証拠だ。
冷房の効かない教室はいつもより澱んでいた。須川も来ているせいかもしれないが、補習という独特の空気のせいか、須川以外にも黒いオーラを纏った人間がいるのではないかと勘ぐってしまう。ただ、補習の内容を詰め込むのに精一杯で、俺はそれが誰なのか推察するような余裕を持ってはいなかった。
一連の補習が終わり、Rユニオンの部室へと赴いた。
昼ご飯挟んで、ここで少しだけ芝山に勉強を教わることになっていた。できれば芝山なんかに教えて貰いたくはないと思っていたが、やっぱり休んでいた隙間は簡単に埋まらない。補習を聞いていてもわからないところが出てくるし、ここは大人しく芝山先生に頼むしかない。
芝山は塾の夏期集中講座までの短い時間、効率的に俺に指導するため、プリントまで用意していた。ここさえわかればあとは何とかなるという基礎の基礎部分を纏めたそれは、優等生らしく綺麗に整った字で乱れなく書かれていた。
「悪いな芝山」
食い終わった弁当を片付けながらプリントを受け取って礼を言うと、
「いや、こちらこそ。いい復習になる。やっぱり自分の字で纏めてこそ頭に入るというものだし。君のためだけにやったことではないよ」
眼鏡の端をクイと上げ、任せてくれとまた上から目線の嫌な笑い方をする。
こういう鼻の高そうなところはムカつくが、まぁ、頼りになるし頭はいいし、何も言うまい。
部室には扇風機がなかった。
遮光じゃないカーテンは、強すぎる日差しには無力だった。
汗がだくだくと落ちてくるのをタオルで拭い、持ってきたペットボトルの麦茶をがぶ飲みする。暑い。窓を全開にして空気を入れようとするが、廊下の窓と部室の戸を開け放しても風が通らないくらい空気が動かない。長い間籠もっていたら熱中症になりかねない気がする。
用事が終わったらさっさと帰るか、そう思いながら芝山のプリントを眺めていると、不意に誰かが部室に入ってきた。
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