ユニオン3
「二次干渉者を入れれば、五人なんて直ぐに超える」
「そ、そういうこと?」
とジーク。
「二次……って何? 芝山君みたいな人が、他にもいるってことなの?」
と美桜。
「あと何人か、クラスにいる。他の学年にも、もしかしたら先生の中にもそういう人が居るかもしれない。それくらい、美桜の力は大きいんだ。全く自覚はないようだけどね」
俺とジークはハハハと苦笑いし、互いに目配せした。
ムッと顔をしかめる美桜に、ジークはまぁまぁと気を落ち着かせるよう手降りする。
「ま、無理もない。自分の力の大きさなんて、客観的な数値でもない限りわかりようがないんだ。凌の力も大きくはなったけども、美桜の比じゃないしね。美桜が学校で何度も“こっち”に飛んで来てるからこそ、あちこちに“ゲート”ができたわけだし、同じように“二次干渉者”もたくさん作ってしまった。不可抗力ってヤツだよ」
不可抗力か。便利な言葉だ。
美幸の魔法を浴びて、この世界の殆どの人間が禁忌の子の存在については忘れてしまったはず。美桜の力が強いのは、かの竜ドレグ・ルゴラの血を引いているからに他ならないが、ジークがそのことについて知っているという保障はない。ディアナもそのことを
「で、その二次干渉者に、芝山君は心当たりが?」
ジークが尋ねると、シバは待っていましたとばかりに頬を緩めた。
「ある。一人は確実。な、来澄」
「ああ? あ、ああ……。うん。多分、そう、だと思う」
「歯切れ悪いな」
「アレがそうかと言われると、自信はないが。多分……かな……」
考え事をして、うっかり自分に話題を振られたのに気が付かなかった。
誤魔化すようにわざと目を泳がせて、それから恐る恐る、彼女の名を言う。
「須川……怜依奈」
シバがニヤリと笑った。
「見えたか。お前にも」
「ああ。はっきりと。芝山の言った方法で確認した。アレは間違いなく、俺たちのことを、干渉者のことを知っているような感じだった」
「まさか、須川さんが? 彼女も臭わなかったわ」
美桜は眉間にしわ寄せ、信じられないという風に大げさに両肩を上げて見せた。
「須川さんが私に敵意を持っているかもしれないっていうのは、ここ数日、何となく感じたけど。原因は大体わかってたから、深く考えなかったし、観察もしなかった。“臭い”があればと思ったけど、その……“二次干渉者”? は、どうやら“臭い”を発しないか、弱いということなのよね? だとしたら、私が気付くのは難しいことだったかもしれないわね」
短く息を吐いて、美桜はカップを口元に寄せた。須川の話が出た途端、さっきとは違う意味で機嫌を損ねたような、そんな感じがする。
「原因て?」
シバが個包装の菓子に手を出しながら、美桜に尋ねる。
俺もカップを持ち上げ、喉を潤そうと一口、茶を含んだ。
「何。簡単なことよ。私が凌と仲良くしているのが気にくわないみたいよ、彼女」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます