“干渉者”と“悪魔”3

 今度は、レグルノーラの市街地で起きた事件や事故、それから、様々な怪物の映像だった。俺がやっつけた……実際には、やっつけ損なったわけだが、あのカブトムシみたいな怪物も混じっている。


「この一年なんだ。“悪魔”がやたらと干渉するようになってきたのは。その正体を突き止めれば何とか対処できるんじゃないかと思ったんだけど、そう簡単にはいかなくてね。水際でいくら市民部隊や干渉者たちが必死になって戦っていても、“おおもと”をやっつけなきゃ意味がない。どこからやってきて、どうして“悪魔”になってしまったのか。せめて、時間帯や干渉度合いに何かしらの規則性がないものかと、いろいろ分析してみたんだけど、それもあまり役には立ってなくて」


「でも、ある程度は分析してみたんでしょ。ジークなりの分析結果は知りたいわ」


「分析って言っても、あんまり面白いもんじゃないよ。とりあえず、出現場所を地図に記して、時間帯や現れた魔物の種類を表にしてはみたものの、コレといってはっきりとした傾向があるわけでもなく」


「――あ、あのさ」


 二人がなにやら難しそうな話をしているのをじっと聞いていたのだが、どうにも腑に落ちないことがあった。


「話の腰を折ってゴメン。ちょっといい?」


「何かな、凌」


「“悪魔”って、結局のところなんなの? さっきから、“表”がどうの言ってるってことは、“あっちの世界”となんか関係があるってこと?」


 一瞬、間ができた。

 ジークはまた、何も喋ってないのかよという風に美桜に目配せしている。

 美桜もまた、何にもと、さも当然のように目を逸らした。


「あるも何も、“悪魔”は、“表の世界の干渉者”が変化したものだと考えられてるんだよ」


「――え?」


「つまりね」


 と、今度は美桜が、ジークに私が喋るからと目で合図している。


「“表の世界”の何者かが、私たち“干渉者”と同じように、何らかの力を使って、“この世界”に魔物を送り込んでいるのではないかと。これはあくまで推測の域を出ないのだけど。第一、“あちらの世界”で“裏”の存在を知るものは少ないのだから、元々そういう能力を持っていた誰かが、悪意を持って“裏”に干渉したと考えるのが自然ね。もし、干渉パターンが分析によって判明するのだとしたら、人物像を捉えやすい」


 美桜の目は、乾いていた。いつになく、つり上がって見えた。


「人間……、なの」


「恐らくは、ね」


 恐らく。いや、その言い方じゃ、十中八九と思ってよさそうだ。

 まさか、相手、“悪魔”とやらが同じ人間だなんて思いもしなかった。

 悪の親玉は大抵でっかいモンスター、じゃないのか。ゲームのやり過ぎか?

 俺は渇いた喉に、無理やり唾を押し込めた。ごくっと喉仏が動く。


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