第100話 四章 孤高の孤独

ラファエルはおずおずとクララを抱きしめた。


クララはこの温もりをずっと望んでいたのだと知った。


両親と死に別れたあの日から、得られることがなかった感触。


「ああ、これで私も最後は孤独じゃなかったと思える。

 ……ありがとう」


クララは満足げに軽くのどを鳴らした。


「クララ……」


ラファエルがクララをしっかりとかき抱いたそのとき、


「勝手に先に死なないでちょうだい」


エマが言い放った。


「エマ!?」


ハンターのベルトを握りしめたエマが言う。


「ハンターには行きつけの闇医者がいる。

 金さえ払えば半獣人(デパエワール)であれ診てくれるはずよ。

 ラフィ、すぐにクララを連れて行って」


「そんなことどうして」


ラファエルが言い終わる前にエマが告ぐ。


「ヴィジョンよ。

 クララを助けなくていいの?」


「行くよっ」


ラファエルとエマはクララの両脇を抱えて立ち上がらせる。


クララは苦悶の表情で悲鳴をあげた。


「少し我慢して。

 すぐに医者に連れて行くから」


クララは困ったようにエマを見る。


エマはしっかりとその瞳を受け止めた。


「確かにあなたの傷は酷すぎる。

 でもまだ死ぬと決まったわけじゃないわ」


「……そうか」


「戦いなさい。

 まだラフィはあなたを必要としてる……でも」


「ん?」


「これ以上ラフィを誘惑したら私が殺すから」


「はは、……痛いんだから笑わせるな」

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