第94話 四章 エマの秘密

クララはラファエルたちに問題を早く解決するよう促した。


クララもこの男に、生きている価値があるとは思ってなかった。


「決められないんなら私が殺す」


「ちょっとクララまで、やめて!」


ラファエルは頭を振る。


「じゃあどうしろっっていうのよ!」


エマが悲痛の叫び声を上げた。


ラファエルはしばらく考え込んだ。


「そう……ハンターを辞めると、この場で誓ってもらう」


クララが鼻で笑った。


ラファエルは自分でも甘いと思う。


けれども傷つけずに事を納めるには信じる以外にはない気がした。


ハンターは安堵の笑みを浮かべて答えた。


「ああ、もう二度と狩りはしねえよ」


「そんなの口からでまかせに決まってる」


「だからって殺したら、僕たちまで同類だよ」


「ラファエルはそうやって自分に都合が良いようにしか解釈しない。

 最低だわ」


エマが心底軽蔑したように言った。


「そんなことない」


「そうだよ」


「エマに何がわかるんだよ」


「わかるよ。だってラフィのことだもん……」


エマの瞳には涙が浮かんでいた。


ラファエルは眉を寄せる。


懐かしい言葉のひびき。


ラフィ。


そうやってラファエルを呼ぶ人間は、一人しかいなかった。


「エマ……もしかしてアリス?」


「そうよ」


「アリスッ!」


エマは大きな瞳をさらに大きく見開いて、ラファエルの頬を平手打ちした。


「バカ! どうしてすぐに気づいてくれなかったの!」


ラファエルは頬の痛みなど、気にならないほどにただ驚いた。


確かに人をじっと見つめる癖や、機嫌を悪くするとすぐに怒ってしまう性格など、重なる部分は多い。


しかし外見はまったく変わってしまっていた。


あの頃のアリスは半獣人などではなく、そばかすの目立つ普通の女の子だったのだから。


「どうしていままで言ってくれなかったの?」


エマは悲しそうに俯いた。


「言えるわけ……ないじゃない。こんな体になって……」

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