第93話 四章 根っからの悪党
気絶したハンターを起こすのは骨が折れた。
揺すっても叩いても起きないハンターに、最後はエマがしびれを切らせてすねを思いっきり蹴り上げる始末だった。
さすがにハンターは飛び起きた。
顔を掻こうとして後ろ手に縛られていることに気づき、鼻の頭が痒いのかもぞもぞ鼻を動かしながらハンターは言った。
「お前ら……何しやがる」
「何って。
襲われる前に来てやったのさ」
クララは腕まくりをして拳を握りしめた。
けれどもハンターも悪党の一端を担うだけあって、そんな脅しには屈しなかった。
臭い息をまき散らしながら豪快に喜んでみせる。
「なんだ、ストリップでも見せてくれるのかい?
だったら別に縛り上げなくたって何もしねえさ」
「黙りなさい」
エマが奪った銃をハンターに突きつけた。
ハンターは真っ赤な目でエマを見据える。
「おいおい、お嬢ちゃん。
そいつは子供が使うとケガするぜ」
「あなたは根っからの悪党よ。
これ以上、悪事を見逃すわけにはいかないわ」
かちりと撃鉄を引いて、ハンターに照準を合わせる。
ラファエルは慌ててエマの腕を押さえ込もうとした。
「……ちょっとっ!
離してっ」
ハンターは手の代わりに足の踵を打ちあわせて喜んだ。
「ははっ、仲間割れか、いいねえ。
じゃんじゃんやってくれ!」
「エマッ!
暴力はだめだよっ」
「じゃあどうしろと言うの?
警察に引き渡そうにも証拠がないわ。
そもそも私たち半獣人(デパエワール)なんて守ってくれない。
でも私は見たの!
この男が、人を……子供やお年寄り、罪のない人をたくさん……」
「お嬢さん、それは違うな。
罪のない人間なんていないんだぜ。
人間は生まれてきたときから罪を背負ってるんだ」
「詭弁よ。
好きで殺しておいてっ」
「確かに殺しってのは最高に気持ちが良い。
特にお前らみたいな半獣人がな。
足をもいでみたり、皮を剥いでみたり、小さい頃に昆虫なんかでやらなかったか?
特にお前の手足はもぎ甲斐がありそうだ」
エマがかっとなって銃を持つ手に力を込めた瞬間、クララがハンターを殴りつけた。
ハンターは勢いよく後ろの壁際まで吹き飛び、拷問器具に埋もれてうめき声を上げる。
「ぐ、ぐぐぅ……」
「ごちゃごちゃうるせえよ、お前」
クララは肩を回して言い捨てた。
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