第92話 四章 彼女たちの行方

■二


エマはハンターから銃をホルスターごと引き抜いて思念を探った。


「大丈夫、まだ誰も犠牲にはなってないわ」


ラファエルはほっと息をつく。


「マリアンヌさんの行方は?」


「待って」


突然現れたラファエルたちに支配人(ミステル)は騒ぎ立てる。


「おい、こんなところで何をしてるんだお前たち。

 早く縄を解けっ」


暴れる支配人(ミステル)にラファエルは尋ねる。


「マリアンヌさんをどこに連れ去ったんですか?」


「お前たちまで、一体なんだ!

 関係ないだろう!」


「いいわ。

 私がやるから。

 ちょっと黙らせていて」


エマの言葉を受けてクララが口輪を噛ませる。


「どうだい。

 口輪をされた気分は?

 なかなか屈辱的だろう?」


「んーっ。

 んんーっ!」


エマは支配人(ミステル)のポケットに収まっていた懐中時計をヴィジョンした。


見えたのは顔の見えない全身真っ黒な衣装に身を固めた男だった。


マリアンヌを引き渡し、報酬を得ている。


「売り払ったのね。

 黒装束の男はだれ?」


ラファエルが口輪を取り払う。


「このっ、こんな扱いをしおって無礼な!

 覚えておれっ」


「いいから誰なんだ?」


「言うかっ!

 誰が口にするものか」


「これ以上を知るためには黒装束の男の持ち物が必要だわ」


エマの言葉にクララはやれやれと首を振った。


「やっぱ拷問させときゃ良かった。

 で、こっちはどうすんだよ?」


クララは縛りあげて地面に転がっているハンターを足でつついた。


「起こそう。

 これ以上悪事を働かないよう説得しなきゃ」


ラファエルの発言にクララはどうやって、という顔をした。


「わからない」


どうすれば改心するのか、それはラファエルにもわからなかった。


けれどもこのままだとハンターに追われ続ける羽目になる。


それだけは止めなければならなかった。


これ以上、彼女たちを危険な目に遭わせたくない。

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