第91話 四章 怒りの鉄槌
「奴(ミステル)が知らないことはないと思うが……。
マリアンヌの居場所を吐くまでのんびり見学するか?」
クララは気の乗らない様子で二人に聞いた。
「ダメだよっ、助けなきゃ!」
ラファエルが抗議する。
「何の義理もないどころか、騙されてたっていうのに、お前は本当におめでたいな」
「だって」
クララはラファエルの頭をぽんと叩いた。
だがその手つきには言葉とは裏腹に優しさが感じられる。
「そっちはどう思うんだ?」
クララの問いにエマは答えた。
「確かに答えを聞いて先回りするのも手だわ。
でもハンターにマリアンヌの所在を知られて厄介なことになる可能性もある。
私たちが先に助け出せる保証はないもの。
支配人(ミステル)がどれだけ口を閉ざしても、私はヴィジョンを用いて調べる自信がある。
ただ、この状況でどうするか」
「戦うか?」
「私には選べない。
ラファエル、あなたに任せるわ」
「僕は……みんなを助けたいんだ。
どのみちハンターにはマノンとエレーナの無事を確認しなきゃいけないし、これ以上追いかけ回されないようにいつかは戦わなければならないと思う」
クララが口笛を吹く真似をした。
「決まりだな」
「でもどうやって?」
「私に考えがある。
奴はガンマンだ。
この狭い洞窟で自由に銃は使えない。
接近することができればチャンスだ」
「どうやって近づくの?」
クララはにやりと笑った。
「知ってたか?
豹は木登りが得意なんだよ」
クララは煉瓦の壁に鋭い爪を引っかけた。
はじめは慎重に、慣れてくるとどんどん天井に近い位置へ登っていく。
順調にハンターの頭上めがけて登っていたクララだったが、もろくなっていた天井が重みに耐えきれずにぱらぱらと砂塵を落とした。
ハンターが顔を上げる。
「あぶないっ!」
ラファエルは思わず叫んだ。
エマがとっさに羽ばたく。
エマの羽の鱗粉がはらはらと散って風に乗った。
「……!」
見上げたハンターの目の前で鱗粉はキラキラと輝く。
視界を遮られてハンターは思わず目を細めた。
クララが一気に飛び降りた。
「くっ!」
ハンターはホルスターの銃に手を伸ばしたが、クララのほうが早かった。
頭上から振り下ろされた一撃に、ハンターは昏倒した。
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