第90話 四章 拷問

ラファエルたちはエマの案内で街の外れと移動した。


闇が街を覆い尽くしている。


ある者は酒に酔い、


ある者は酔いつぶれた男の財布を盗み、


ある者は媚びた瞳で財布の中身を狙う。


誰もみすぼらしい三人のことなど気に留める者はいなかった。


明かりから逃れるように進んだ先は墓守すらいないようなさびれた墓地だった。


「こんなところに?」


「ええ。格好の居場所でしょ」


エマは足取りに迷いはない。


小さな墓地の行き止まりには崩れた地面と、その下には地下廊が見えた。


この奥にハンターはいるらしい。


エマは軽々と、クララとラファエルは足場を見ながら慎重に下りる。


なかは薄暗く目が慣れるまで何も見えなかった。


わずかに漏れる灯りに目がなれるのを待つ。


長い通路が続き、そこにあったのはたくさんの死体だった。


白骨化したものから比較的新しいものもある。


「地下墓所(カタコンベ)か」


「そうよ。でもこれはハンターの仕業。

 半獣人(デパエワール)のせいにして、ハンターは殺人を繰り返している」


 ひどく損傷した一体を指差してエマは言った。


切り刻まれ、瓦斯で膨らんだその遺体はまだ小さな子供のようだった。


「胸くそ悪いな」


クララが顔をしかめた。


「奥はもっとひどいわ。心して」


それから幾つもの死体をまたぎ越して、ろうそくの灯りがゆらめく一番奥にいたのはハンターと、椅子に縛られた支配人(ミステル)だった。


通路と比べて広く、高く作られたその部屋で、支配人(ミステル)の殴られた顔はあごと同じくらいパンパンにふくれあがっていた。


ハンターは上機嫌に見たこともない器具を磨いていた。


どこかからすきま風がびゅうと吹きすさぶ。


ラファエルは悪寒を感じて思わず身をすくませた。


「さあ、そろそろ吐く気になったかな?

 あの白鳥の半獣人をどこに売った?」


「知らん。

 ……知っていたところで誰が貴様などにっ。

 あれは儂のものだ」


「意地を張ると死ぬより辛い苦痛を味あうぜ」


「儂のサーカスを台無しにしてくれおって。

 貴様にびた一文儲けさせるものか!」


「強欲の固まりだな、あんたは。

 感心するぜ……だが、いつまでその虚勢ももつかな」


ハンターは慣れた手つきで拷問の準備をはじめた。

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